2011年5月25日水曜日

「キッコーマンの醤油」が教えてくれること

市場の文化を分かるには、色々なモノやコトからみていかないといけませんが、そのなかでも食は欠かせないアイテムです。昨日、ソムリエの方と話していたのですが、ワインなどのアルコールは、味覚ではなく嗅覚勝負。そして嗅覚は味覚以上に脳に残る、と。そこで、「過去の記憶」が重要になります。もちろん味覚も記憶が左右します。どんなに長野で食べたスイカが美味しくても、トスカーナで食べるスイカが美味しくても、そこには大きな乖離が、実はある・・・ということです。求める「あの美味しさ」が、もともと違うのです。

というわけで、食の記憶は文化のかなり幹を作るはずと考えて良いでしょう。ぼくがわりと頻繁に食や食器の事例を挙げるのは、あなたが自分の生活を振り返って比較しやすいからです。しかし、もう一つ理由があります。UXに関心の高い方たちは、電子デバイスやソフトウェアの分野で「生活」していることが多いため、この文化の根幹のありようと職業上遠い、ということがあります。伝統的な分野にいる人は、グローバルで動きの激しい世界をみることが参考になるし、世界単一商品的な世界にいる人は、ローカルなコンテクストが根を張っている分野で目を開かれます。

そこで、今週から三回連続で日経ビジネスオンラインの「新ローカリゼーションマップ」は食を取り上げました。今日アップしたのが、キッコーマンの醤油です。アジア市場に関する戦略から、次のようなことを書きました。この意味を考えていただけたら、幸いです。

米国では肉料理にマッチする「TERIYAKI」で食文化にブリッジを作り、醤油にまったく縁がなかった市場に入り込むことができた。それに対し て、似たものが沢山ある市場では、カテゴリーが違うように見せる努力をしないといけないのだ。この2つの状況は、対照的な印象を受けるが、マーケットで独自のカテゴリーを構築するという意味では共通している。

 ローカリゼーションとは、現地向けに、単純に仕様や味を合わせればいいということではない。「適合する」という意味は、従来の文脈を読みながら、 枝分かれ的なコンテクストを自ら作り、そこに自分たちの商品のポジションを作り出すことでもある。競争が激化した市場で差別化が難しくなり、イノベーショ ンが求められるという状況と相似である。創造力はいつの世でも必要不可欠なのだ

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